会社を辞める人を増やす!? 離職率が高い企業の人手不足対策
人手不足と離職率に悩む中小企業向けに、人口減少・働き方改革の最新動向を踏まえた「これから10年生き残る人事戦略」を解説。残業頼み経営の限界と、今すぐ見直すべき4つの対策を具体的に紹介します。
(1)人手不足対策、今のままで本当に大丈夫か?
人手不足に強い危機感を持つ企業は、もはや珍しくありません。
しかし、その「危機感の持ち方」と「打ち手」は、会社によって大きく違います。
中でも一番多いパターンが次のようなものです。
- 「採用活動しても人がなかなか採れない」
- 「人手不足は一時的。今は既存社員に残業や休日出勤で頑張ってもらって乗り切ろう」
- 「そのうち景気も変わり、また優秀な人材が入ってくるはずだ」
つまり、
という未来予測を前提に、残業と休日出勤でしのごうとする人事戦略です。
結論から言うと、この未来予測を前提にした人手不足対策は、
これからの10年を考えれば「ほぼ確実に破綻する」と考えた方がいいでしょう。
その理由を、データと構造の両面から見ていきます。
(2)人口構造の変化と労働力減少:最新データからの警告
まず前提として、日本はすでに「人が毎年減り続ける国」です。
- 生産年齢人口(15〜64歳): 約7,356万人(前年から減少継続)
- 65歳以上の割合: 約29.3%(過去最高水準)
つまり、今「人手不足だ」と感じている多くの企業は、
「今の人手不足はまだ序の口」であり、これから先は「ますます人が採れない」が"新常態"になるという厳しい現実に直面しているのです。
「景気が良くなれば人が戻ってくる」という発想自体が、
人口構造の変化を無視した非常に甘い見通しと言えるでしょう。
(3)働き方改革・法制度の強化で"残業頼み"は通用しない時代に
人口が減少しているだけでも人手不足なのに、
そこに追い打ちをかけるのが、法令改正と社会の流れです。
| 法制度 | 内容 | 企業への影響 |
|---|---|---|
| 同一労働同一賃金 | 2021年から中小企業にも完全適用 | 正社員・非正規社員間の不合理な待遇差の是正が必須 |
| 時間外労働の上限規制 | 罰則付きで運用 | 残業・休日出勤による穴埋めが重大なリスクに |
これらの制度強化が本格化する中で、
「残業と休日出勤でしのぐ旧来モデル」は、
今後ますます企業の選択肢から外れていくでしょう。
(4)これからの10年は「慢性的な人手不足の時代」
以上のデータと法制度の両輪から言えることは、次のとおりです。
- 経済がゼロ成長でも、人手不足は年々ひどくなる
- 採用難は一時的ではなく「構造的」に続く
- 人手不足対策は、中小企業にとって「最大級の経営課題」になる
つまり、
という認識が、経営者には絶対に必要です。
この状態は、ロボットやAIなどの抜本的な生産性向上策が
現場レベルまで普及しきるまで続くでしょう。
少なくともこれから10年程度は「慢性人手不足」を前提に経営を設計する必要があると考えるべきです。
(5)「今の社員に頑張ってもらう」人事は、1〜2年で破綻する
それにもかかわらず、いまだに
「今の社員に残業と休日出勤で頑張ってもらい、この人手不足を乗り切ろう」
という発想に固執する会社は少なくありません。
しかし、「慢性人手不足の時代」において、
この施策を続けるとどうなるか。構造的に見れば、結果はほぼ決まっています。
休日出勤や残業が増えすぎる
モチベーション低下、収益性悪化
疲弊した社員から離職
「とにかく人手」で採用
教育・フォローの手間増加
このサイクルは、慢性的に回り続ける構造です。
(6)これからの人手不足対策で、経営がやるべき4つの方向性
① 全社的意識改革
- 「人が余っていた時代の価値観」を捨てる
- 「人は代わりがきく」という前提を捨てる
- 「人材はコスト」ではなく「人材は経営資産」という共通認識をつくる
② 人事システム構築の見直し
- 同一労働同一賃金に対応した評価・処遇制度の整備
- 若手・中堅が将来像を描けるキャリアパス設計
- 採用・配置・育成・評価・処遇を一貫した戦略にする
③ IT化・省人化の推進
- 受発注・在庫管理・シフト管理・勤怠管理などの自動化
- 人が「人にしかできない仕事」に集中できる業務設計
④ 経営戦略そのものの見直し
- 「人がいなくても回る」か「人が集まる」ビジネスモデルへ転換
- 人手がかかる割に利益率が低い事業の再検討
(7)まとめ:人手不足対策は「経営の覚悟」の問題
- 日本はすでに「慢性的な人手不足の時代」に入っている
- 残業と根性論で乗り切る経営は、必ず破綻する
- これからの経営には
- 意識改革
- 人事制度改革
- IT化
- 経営戦略の再設計
人手不足対策は、「今いる社員にどこまで頑張ってもらうか」という話ではありません。
「この会社は、これから10年、人とどう向き合うのか」という経営の覚悟の問題です。