(1)人手不足対策、今のままで本当に大丈夫か?

人手不足に強い危機感を持つ企業は、もはや珍しくありません。
しかし、その「危機感の持ち方」と「打ち手」は、会社によって大きく違います。

中でも一番多いパターンが次のようなものです。

  • 「採用活動しても人がなかなか採れない」
  • 「人手不足は一時的。今は既存社員に残業や休日出勤で頑張ってもらって乗り切ろう」
  • 「そのうち景気も変わり、また優秀な人材が入ってくるはずだ」

つまり、

危険な思い込み: 「今だけ踏ん張れば、そのうち人手不足は収まる」

という未来予測を前提に、残業と休日出勤でしのごうとする人事戦略です。

結論から言うと、この未来予測を前提にした人手不足対策は、
これからの10年を考えれば「ほぼ確実に破綻する」と考えた方がいいでしょう。

その理由を、データと構造の両面から見ていきます。

(2)人口構造の変化と労働力減少:最新データからの警告

まず前提として、日本はすでに「人が毎年減り続ける国」です。

2025年時点の人口統計(総務省発表):
  • 生産年齢人口(15〜64歳): 約7,356万人(前年から減少継続)
  • 65歳以上の割合: 約29.3%(過去最高水準)

つまり、今「人手不足だ」と感じている多くの企業は、
「今の人手不足はまだ序の口」であり、これから先は「ますます人が採れない」が"新常態"になるという厳しい現実に直面しているのです。

「景気が良くなれば人が戻ってくる」という発想自体が、
人口構造の変化を無視した非常に甘い見通しと言えるでしょう。

(3)働き方改革・法制度の強化で"残業頼み"は通用しない時代に

人口が減少しているだけでも人手不足なのに、
そこに追い打ちをかけるのが、法令改正と社会の流れです。

法制度 内容 企業への影響
同一労働同一賃金 2021年から中小企業にも完全適用 正社員・非正規社員間の不合理な待遇差の是正が必須
時間外労働の上限規制 罰則付きで運用 残業・休日出勤による穴埋めが重大なリスクに

これらの制度強化が本格化する中で、
「残業と休日出勤でしのぐ旧来モデル」は、
今後ますます企業の選択肢から外れていくでしょう。

(4)これからの10年は「慢性的な人手不足の時代」

以上のデータと法制度の両輪から言えることは、次のとおりです。

  • 経済がゼロ成長でも、人手不足は年々ひどくなる
  • 採用難は一時的ではなく「構造的」に続く
  • 人手不足対策は、中小企業にとって「最大級の経営課題」になる

つまり、

重要: 日本はすでに「慢性的な人手不足の時代」に入っている

という認識が、経営者には絶対に必要です。

この状態は、ロボットやAIなどの抜本的な生産性向上策が
現場レベルまで普及しきるまで続くでしょう。
少なくともこれから10年程度は「慢性人手不足」を前提に経営を設計する必要があると考えるべきです。

(5)「今の社員に頑張ってもらう」人事は、1〜2年で破綻する

それにもかかわらず、いまだに

「今の社員に残業と休日出勤で頑張ってもらい、この人手不足を乗り切ろう」

という発想に固執する会社は少なくありません。

しかし、「慢性人手不足の時代」において、
この施策を続けるとどうなるか。構造的に見れば、結果はほぼ決まっています。

1
既存社員の疲弊

休日出勤や残業が増えすぎる

2
生産性低下

モチベーション低下、収益性悪化

3
離職開始

疲弊した社員から離職

4
質の低い採用

「とにかく人手」で採用

5
さらなる疲弊

教育・フォローの手間増加

1に戻る(悪循環)

このサイクルは、慢性的に回り続ける構造です。

結論: 「今の社員に無理をさせて乗り切る人事政策」は、長くても1〜2年で破綻する

(6)これからの人手不足対策で、経営がやるべき4つの方向性

① 全社的意識改革

  • 「人が余っていた時代の価値観」を捨てる
  • 「人は代わりがきく」という前提を捨てる
  • 「人材はコスト」ではなく「人材は経営資産」という共通認識をつくる

② 人事システム構築の見直し

  • 同一労働同一賃金に対応した評価・処遇制度の整備
  • 若手・中堅が将来像を描けるキャリアパス設計
  • 採用・配置・育成・評価・処遇を一貫した戦略にする

③ IT化・省人化の推進

  • 受発注・在庫管理・シフト管理・勤怠管理などの自動化
  • 人が「人にしかできない仕事」に集中できる業務設計

④ 経営戦略そのものの見直し

  • 「人がいなくても回る」か「人が集まる」ビジネスモデルへ転換
  • 人手がかかる割に利益率が低い事業の再検討

(7)まとめ:人手不足対策は「経営の覚悟」の問題

重要ポイント:
  • 日本はすでに「慢性的な人手不足の時代」に入っている
  • 残業と根性論で乗り切る経営は、必ず破綻する
  • これからの経営には
    • 意識改革
    • 人事制度改革
    • IT化
    • 経営戦略の再設計
    が不可欠である

人手不足対策は、「今いる社員にどこまで頑張ってもらうか」という話ではありません。
「この会社は、これから10年、人とどう向き合うのか」という経営の覚悟の問題です。