離職対策シリーズ 全5記事

人材定着・離職率改善のための体系的な知識を5つの視点から解説しています。この記事は第5回(最終回)です。

懸命に働くリーダー達が陥っているジレンマ ~ コロナ禍が追い打ちをかけた現実

どんな業種・職種においても、円滑な組織運営に不可欠なものは「メンバー間における個性の相互理解」です。

人にはそれぞれ考えや行動の癖、趣向等の個性が存在しています。他メンバーの個性を無視し自分の我を押し通しては、良い人間関係作りも、適材適所の仕事の割当も、他メンバーの弱点を補いあうこと等もできません。

相互理解とは何か?

「メンバー間における個性の相互理解」とは:

  • 上司が部下の個性(性格、価値観、考え・行動・感じ方の癖、趣向)を理解する
  • 部下が上司の個性を理解する
  • メンバー同士で各人の個性を正しく、詳細に理解する

といった単純なことです。

実際に皆さんも、はじめは嫌いな人、苦手な人と感じていても、じっくりとコミュニケーションをしていけば実は良い関係を築ける仲間だったという体験をしたことがあると思います。

しかし現代は...

今の時代、相互理解を深めていくには「互いを理解しあう為のコミュニケーションの時間」の確保がドンドン難しくなっています。

コミュニケーション時間減少の5つの原因

  • 仕事量の増加
  • 残業時間の削減
  • IT化の促進による会話の減少
  • 飲み会や慰安旅行、レクレーション等などの仕事外のコミュニケーションの場の減少
  • プライベートや休憩時間と仕事を切り分けたがる若手社員の増加

といった傾向が年々強まっているからです。リーダー達の多くは、メンバー間の相互理解の為にコミュニケーションが必要なことは分かっていますが、このような状況ではそれは後回しにせざる得ません。(例えば、上司部下間で一杯飲みに行き話をする時間も、以前より随分減っているのではないでしょうか?)

コロナ禍が追い打ち

更にこれに追い打ちをかけたのがコロナ禍です。

  • コロナによるリモートワークの増加
  • マスクをしながら表情を見えない状況での会話
  • ソーシャルディスタンスを保つため、食事や飲み会等の自粛

これらにより、ますますチーム内の相互理解が難しい、チームワーク作り受難の時代になったのではないでしょうか?

コミュニケーション不足を補う新しい人事の常識とは?

今、コミュニケーション時間の不足は、「互いの個性の理解」が進まないため、嫌いな人や苦手な人が職場内にいる社員を以前より増やしています。苦手なタイプの仲間との人間関係のストレスに悩んでいる人を増やしているのです。

離職の悪循環

そしてこのストレスが限界まで高まった人達が、人間関係の行き詰まりを理由に会社を辞めていきます。

では「構造的なコミュニケーションの時間不足」を補うにはどうすればいいのでしょうか?もちろん、相互理解するためのコミュニケーションする時間がとれない。だから「チームワークがうまくいかなくて仕方ない」という訳にはいきません。

新しい時代の解決策

私達には、そんな時代に対応する為の「新しい相互理解する方法」が求められています。

解決策:コミュニケーションツールとしての「自分取説」

そこで解決策の一つになるのが、各人「自分取説(自分取扱説明書)」を作成し、それを会社のコミュニケーションツールとしてチーム内でシェアするというやり方です。

自分取説とは?

自分取説とは、「自分の取扱説明書」。

嫌いな人や苦手な人とも上手に付き合うことをサポートする、「コミュニケーションツール」と考えて下さい。

従来の相互理解の方法

これまで私達は、打ち合わせや食事、飲み会等で、たっぷりとコミュニケーション時間をとることで、

  • どんな性格で
  • 能力があり
  • どんな価値観を大切にしており
  • どんなコミュニケーションを好み
  • どう接してほしいか?

等々の個性に関わる無形な情報を相互理解し、メンバー同士助け合って働くことができました。

新時代の相互理解の方法

これを新時代に対応して、以下の2つを行うことで「相互理解の為のコミュニケーション時間不足」を補っていくというやり方です。

ステップ1

自分取説を作成

自分の性格、価値観、考え・行動・感じ方に関する癖、趣向を自分取扱説明書としてまとめる。

ステップ2

チーム内でシェア

それをチーム内でシェアしあう。(自分取説を互いに見せ合いながら意見を交わす)

自分取説で分かること

チーム内で自分取説をシェアすることでその個性を理解することで、

  • なぜ、あの人は○○のような行動をとるのか?
  • なぜ、○○のように考えていくのか?
  • なぜ、○○と言っても理解してくれないのか?
  • なぜ、コミュニケーションがうまくいかないのか?

等々が分かります。結果、人間関係も早く良好になっていき、離職なども減っていくことになるのです。

図解:自分取説を活用したときの「負の連鎖」と「善の連鎖」

自分取説なし vs 自分取説あり

段階 自分取説がない場合 自分取説を活用した場合
きっかけ 【仲間とのトラブル発生】
(人間関係の悪化、結果が出ない、仲間がおかしな行動をしているように見える 等々)
反応1 過去の仕事から、トラブルで生まれた仲間への固定概念を想起 自分取説で相手の思考・行動パターンを確認
反応2 なぜそうなったのか?原因分析に固執 自分の行動が相手の個性に合ったものだったかをチェック
行動 トラブルを生み出した行動を再び繰り返す 自分の行動を相手の個性に応じた方法に改善
結果 更に、互いの不信感が高まり問題が悪化する
→ 負の連鎖に!
関係が再び円滑な関係に!
→ 善の連鎖に!

ビジネスにおける自分取説活用の場面

順調に仕事をしている時は、自分取説は必要ないかもしれません。しかし、ビジネスではそのような時ばかりではありません。

自分取説が特に有効な6つの場面

  • 新しい新入社員が入ってきた時(新たに人事異動で人が入ってきた時、自分が異動になる時)
  • 人間関係がトラブった時、離職しそうな社員が発生した時
  • 職場内に苦手な人や嫌いな人がおり、付き合い方が分からない時
  • チームの中で浮いた社員・問題児、思うように成長しない人材が発生した時
  • 目標未達等、逆境にチームが陥った時・大きなトラブルが発生した時
  • 大きな変化(仕事の役割変更等)をチームがしいられている時

これらの場面では、普段付き合うようにはうまくいきません。接し方を変えていく必要があります。そんな時、コミュニケーションツールである「自分取扱説明書」があれば、それを読み直すだけ。どう付き合っていくべきかが簡単に分かります。

離職率改善とチームワーク向上を同時に実現する

例えば、新入社員や若手の離職に困っている企業の場合…。

よくある問題

一般的に新入社員の配属時には、上司・先輩も新入社員を全く知らない、新入社員も上司を知らない状況からスタートします。にも関わらず、最近ではその後も互いを知るためにじっくりとコミュニケートする時間もとれないまま、仕事を進めている会社も多いようです。

これでは互いの心配り・ケアなど全くできないチームとなってしまい、間違いなく新入社員の離職率は高くなります。

離職率改善のための3ステップ

そのような企業にオススメなのは以下のたった3つをやること。これだけで離職率を改善できます。

1

受け入れチームの自分取説作成

新入社員を受け入れるチームの全員に自分取説を作って貰う。

2

新入社員の自分取説作成

新入社員にも自分取説を作って貰う。

3

相互確認と心配り設計

受け入れる上司・先輩社員には、新入社員が作成した自分取説に目を通して貰い、どのように心配りをしていけばよいかを考えて貰う。新入社員にも上司・先輩の自分取説に目を通して貰い、同じように考えて貰う。

相互理解による心配りの例

自分取説の情報により、

  • 上司・先輩: 「新入社員は自分へのもてなしの心で明るく冗談を言ってくれるので、その気持ちにたまには付き合ってやろう」
  • 新入社員: 「先輩のAさんは、冗談に反応してくれないのは悪気があるんじゃなくて性格だから。データに基づき論理的に考えることを求めているので、それに応えるようにしていこう!」

等々と、互いに心配りをしながら仕事をしていくことになります。

成果

この互いを理解した上での心配りだけでも、離職率は大幅に改善していくことになるのです。

まとめ

この記事のポイント

  • コミュニケーション時間の不足は、人間関係トラブルと離職を増やす
  • 自分取説(自分取扱説明書)は、時間不足を補う新しいコミュニケーションツール
  • チーム内で自分取説をシェアすることで、相互理解が深まる
  • 自分取説により「負の連鎖」を「善の連鎖」に転換できる
  • 新入社員受け入れ時の3ステップで離職率が大幅改善