経営者が新しい一歩を踏み出すとき、最大の敵は競合他社でも、資金繰りでもない。あなた自身の脳内に棲みつき、耳元で絶望を囁き続ける魔物、「グレムリン」である。
戦略は完璧、リソースも揃っている。なのに決断の瞬間に手が止まる。その正体は能力不足ではなく、あなたを「現状」という檻に縛り付けるための高度な自己洗脳なのだ。
グレムリン:鏡の中の「もう一人の自分」
本来の自分
「新規事業に挑戦したい」
「組織を変革したい」
「次のステージへ」
グレムリン(影)
「お前には無理だ」
「また失敗するぞ」
「準備不足だ」
→ 決断の瞬間、影が本体を支配する
1. 決断の瞬間に、あなたの足を掴むものは何か
やるべきことは見えている。勝機も確信している。なのに、なぜか土壇場で「まだ早いのではないか」「もう少し準備が必要だ」という声が頭をよぎり、足が止まってしまう。
その声は、あなたの「慎重さ」ではない。脳内に棲みつき、あなたの行動を封じ込める魔物「グレムリン」の囁きである。
前回提示した「世界・こだわり型」、または慎重派の経営者に憑きやすいグレムリンです。
グレムリンの囁き: 「まだこのサービスは未完成だ」「あと1つでも不具合が出たらブランドに傷がつくぞ」
予防・事後策: 致命的な欠陥が起きる確率は1%未満であることを過去データから抽出。即座に対応できる「専任カスタマーサポートの24時間体制」を事前に構築。
結果: 「完璧か、ゼロか」という二極論を排し、許容範囲内のリスクとリカバリー体制を整えることで、スピード感のある市場投入を実現した。
2. グレムリンの解析:あなたを守り、あなたを殺す「過去の影」
グレムリンの正体は、かつてあなたを成功に導いた「慎重さ」「危機管理能力」「常識」が、環境の変化に対応できず「呪縛」へと変質したものだ。
「家族を路頭に迷わせるのか」「お前にそんな能力はない」と、最も痛いところを突き、変化を「死」として認識させる。それは、あなたを守るふりをして、成長を殺し、現状維持という名の毒を飲ませ続ける高度な自己洗脳である。
3. 変化の阻止:「やらない理由」を量産する天才
「本当にやりたい」という純粋な希望に対し、グレムリンは「でも、まだまだ」「本当にやれるのか?」と容赦なく自信を奪いに来る。
前回提示した「利他重視型・貢献型」の経営者に憑きやすいグレムリンです。
グレムリンの囁き: 「長年支えてくれた幹部を降格させたら、恩知らずだと思われるぞ」「組織がバラバラになるぞ」
予防・事後策: 幹部のプライドを傷つけない「特別顧問へのスライド案」と、反発が起きた際の「新体制の説明会」をマニュアル化。
結果: 漠然とした「罪悪感」を「経営上の不合理なコスト」へと変換し、幹部一人の感情よりも組織全体の生存を優先する決断を下した。
4. 解毒(デトックス):鏡に映し出される「狂気の自己否定」
グレムリンを退治する第一歩は、その声を「自分以外の何か」として客観視することだ。そのための荒療治が、「背後からの囁き」のワークである。
自分の自信を奪っている言葉(グレムリンの囁き)を書き出し、信頼できる第三者に、自分の真後ろからその言葉を囁いてもらう。
「お前には無理だ」「また失敗するぞ」「準備不足だ」
他人から耳元で囁かれることで、経営者は愕然とする。いかに非合理的で、いかに恐ろしい自己否定を、日々自分自身に浴びせ続けていたか。この「客観視」こそが、洗脳を解き放ち、自信を回復させるための最初で最大のショック療法になる。
背後からの囁きワーク:グレムリンの客観視
経営者(前を向いている)
「お前には
無理だ」
「また
失敗するぞ」
「準備
不足だ」
→ 第三者が真後ろから囁く瞬間、経営者は「狂気」を自覚する
5. 解決への希望:外部視点による「グレムリンの飼い慣らし」
UPシステムは、グレムリンが好む「脳内の霧」を数値化し、強制的に晴らすためのレントゲンです。
VM社のエグゼクティブコーチングは、このグレムリンを単に「追い払う」のではない。外部視点(ティーチング)によって、その囁きがいかに非合理的であるかをデータで突きつけ、解毒する。
グレムリンを退治するのではなく、その正体を暴き、自信を回復させることで、経営者は本来持っていた「軽やかな決断力」を取り戻すのだ。
6. 【核心】グレムリンを「ロジカルの檻」に閉じ込める
グレムリンの唯一の武器は、実体のない「漠然とした不安(霧)」である。ならば、その霧をロジックで切り裂き、透明化すればいい。
ロジカルの檻:霧を構造化して封じ込める
「何が起きるかわからない」
「リスクが怖い」
② 発生確率の分析
③ 予防策の設計
④ 事後策の確保
→ 霧は透明化され、グレムリンは沈黙する
前回提示した「壮大・利益追求型」の経営者に憑きやすいグレムリンです。数億円の設備投資を前に、「もし失敗したらすべてを失う」というグレムリンに支配されていた社長。彼はコーチと共にリスクを徹底的に分解した。
リスクの洗い出し: 「失敗」の定義を売上減・資金ショートに分解。
発生可能性の分析: 過去データから、最悪の事態が起きる確率は3%以下と判定。
予防策: 受注確度の高い顧客3社を事前に確保。
事後策: 失敗しても個人資産の売却で社員の給与は3年分確保できることを確認。
「失敗しても、死ぬわけではない」というロジカルな結論に達した瞬間、グレムリンは沈黙し、彼は翌日に投資を決断した。
結論:解毒された脳で、次の一歩を。
グレムリンを打ち破ったとき、経営者は本来持っていた「確信」を取り戻す。
自分の自信を奪っている言葉の正体を知り、それをロジカルな檻に閉じ込めること。性格を変える必要はない。自分を縛る呪縛を「解毒」し、本来の自分を使い倒すための設計図を手に入れるのだ。