「仕組みを作ったが、動かせる人材がいない」
「マニュアルは立派だが、現場がそれをお荷物だと思っている」
仕組み化に挑む経営者が最後に行き着く悩みは、常に「人」です。しかし、ここで「もっと優秀な人を採らなければ」「意識改革の研修をしよう」と考えるのは、典型的な的外れです。
仕組みが機能しない本当の理由は、人事(採用・教育・評価)が仕組みと切り離され、単独で走ってしまっていることにあります。人事は「管理」の部署ではありません。第1〜第3前提という設計図を成功させるために、逆算して最適な「配役」と「稽古」を施す、最大の「支援業務」であるべきなのです。これが、私が提唱する「逆算の人事」の正体です。
1. はじめに:人事は「戦略と仕組み」の伴走者である
人事が「一般的な優秀さ(高学歴、高スキル)」を追い求めると、組織のOSは破壊されます。なぜなら、会社ごとに必要な「勝てる構造」は異なり、その構造にフィットしない優秀さは、単なる「仕組みのバグ」になるからです。
「逆算の人事」とは、以下の3つの前提から逆算し、人事の全機能を再定義することです。
- 第1前提(戦略)から逆算し、勝ち筋を信じ抜ける人を供給する。
- 第2前提(設計)から逆算し、型を創り、余白を活かせる人を育てる。
- 第3前提(運用)から逆算し、不具合を報告し、成功を伝搬させる人を報いる。
【自社診断】逆算の人事マトリクス
| 人事機能 | 第1前提(戦略支援) | 第2前提(設計支援) | 第3前提(運用支援) |
|---|---|---|---|
採用 |
戦略への価値観一致(カルチャーフィット) | 混沌を「型」にできる構造化能力の保有者 | 異常を忖度なく報告できる規律性と誠実さ |
教育 |
自社の「勝ち筋」と「OS」の徹底インストール | 型の遵守と「意図的な余白」の活用判断力 | 「工夫をシェアする」貢献意欲の醸成 |
評価 |
戦略に沿った一点突破の成果への特別報酬 | 仕組みをアップデート(型化)させた功績 | 成功体験の伝搬(ナレッジ共有)への加点 |
2. 【戦略(第1前提)の支援】「勝ち筋」を体現する人材を供給せよ
人事が最初に行うべき支援は、第1前提(戦略)を実現させるための人間環境を整えることです。どんなに優れた戦略も、それを信じ、実行する人がいなければ絵に描いた餅に過ぎません。
- 採用の転換: スキルの高さよりも、自社の戦略的方向に共感し、その道を突き進むことを「面白い」と感じる価値観の合致を最優先します。
- 教育の再定義: 人事が真っ先に行うべき教育は、会社の「勝ち筋(なぜうちが競合に勝てるのか、なぜこの仕組みが必要なのか)」を徹底的にインストールし、社員の目線を社長の視座にまで引き上げることです。
【失敗事例①:IT企業 A社の「スター採用」による瓦解】
かつてのA社では、戦略を無視してスター営業を採用しました。しかし彼は独自の「型」に固執し、会社の仕組みを否定。周囲の若手も我流を真似し始め、組織全体の仕組みが崩壊しました。人事が「戦略への適正」を見誤った典型例です。
3. 【設計(第2前提)の支援】「型」を創り出し、「意図的な余白」を価値に変える人材
次に人事が支援すべきは、第2前提(設計)を現場で完成させる人材の育成と抜擢です。
- ①「型」を創り出す設計能力: 現場の混沌から共通項を見つけ出し、再現性のある「仕組み(型)」へと落とし込める人材を特定します。彼らは「自分だけができる」を「誰でもできる」に変える、組織の資産形成者です。
- ② 意図的な余白を使いこなす知性: 完成した「型」に依存するだけの「マニュアル人間」ではなく、あえて残された「意図的な余白」を、お客様への付加価値や現場の調整の機会と捉え、柔軟に判断できる知性を養います。
【成功事例②:製造業 B社の「現場設計者」の抜擢】
B社の人事は「自分の作業をマニュアル化したがる社員」を設計担当に抜擢。彼が現場の暗黙知を次々と「型」に変え、その上で「ここから先は職人の工夫に任せる」という絶妙な余白を設計した結果、未経験者の戦力化スピードが3倍になりました。
4. 【運用(第3前提)の支援】「不具合」を財産に変え、成功を伝搬させる番人
仕組みの「運用」を成功させるために、人事が果たすべき役割は、第3前提(運用)を下支えする評価の適正化です。
- ① 忖度なき異常報告を評価する: 仕組みの不具合を見逃さず、誠実に報告できる規律性を評価項目に組み込みます。報告することが「自分の利益(評価)」になるよう仕組み化するのです。
- ② 余白の工夫と成功体験の伝搬: 運用の中での工夫(成功体験)を自分一人のものにせず、新たな「型」の候補として全体へ広めようとする貢献意欲を称賛します。
【成功事例③:サービス業 C社の「成功伝搬」評価制度】
C社では、「自分の工夫を他店舗に展開して成果を出させた社員」を高く評価する賃金体系を導入。現場の「余白」で生まれた成功事例が瞬時に全社へ共有され、最強の自走サイクルが完成しました。
5. おわりに:人力が仕組みを「文化」へと昇華させる
「逆算の人事」とは、社員をルールで管理から解放し、仕組みという舞台で最大限に活躍させるためのインフラです。第1前提〜第3前提という緻密な設計図に対し、人事が最適な「素材」を供給し、磨きをかけ、報いる。この循環が完成したとき、仕組みは組織の「文化」へと昇華します。これこそが、社長がいなくても高収益を上げ続けるための最終回答なのです。
🚩 あなたの会社の「人事」は、仕組みの味方ですか?敵ですか?
【無料経営相談(逆算の人事・組織診断)のお申し込みはこちら】🚩 「凡人を一流に変える」勝てる構造の構築支援
【経営コンサルティング:仕組みと人事が連動する「自走組織」の設計はこちら】🚩 社長の決断が組織の天井を決める。次なるステージへ。
【エグゼクティブコーチングの詳細はこちら】