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『創業10年の壁』を突破する戦略的レジリエンス|成功要因が「衰退の種」に変わる前にすべきこと

2025年1月15日 経営戦略・実行 創業10年, 戦略的レジリエンス, 成功体験の毒, エグゼクティブコーチング

1. 導入:その「横ばい」は、衰退へのカウントダウンではないか

「倒産の危機ではない。しかし、かつてのような爆発的な勢いもない……」
創業から10年前後を迎えた経営者の多くが、言葉にできない閉塞感に直面します。以前は出せば売れていた商品が動かなくなり、売上や経常利益のグラフはなだらかな曲線を描いて頭打ち(踊り場)の状態に入ります。

ここで、ご自身のスケジュール表を振り返ってみてください。
「売上は横ばい。しかし現場のトラブル対応や細かな指示出しで、社長の予定は真っ赤に埋まっていないでしょうか。5年後の戦略を練る時間は、今月1時間でもありましたか?」

もし答えが「NO」であれば、あなたは今、経営者として最大の岐路に立っています。今、対策を打たなければ、その踊り場は「成長の休息」ではなく「衰退の始まり」になります。

2. 「10年の壁」の正体:成功要因が「制約条件」に変わる瞬間

10年間の成長を支えてきたはずの要素が、ある日を境に成長を阻害する「制約条件」へと変質します。これを直視できるかどうかが、第二創業期へ進めるかの分かれ道です。

顧客構造:甘えが招く「チャレンジの欠如」

【事例 A社:精密部品加工業】

創業期を支えたのは、社長自らが足で稼いだ「何でも受ける」小口・多品種の顧客層でした。しかし、組織が30人規模になると、これら多数の小口案件が膨大な管理コスト(見積、進捗管理、物流)を発生させ、利益を圧迫。さらに「今の顧客との取引でとりあえず食えている」という偽りの安心感が蔓延し、新規市場(EV分野等)への進出意欲を削ぎ、本来必要なチャレンジを不足させていたのです。

ノウハウ:社長・幹部の「職人技」がボトルネックに

【事例 B社:IT受託開発】

社長と創業メンバーの卓越した技術力がB社の強みでした。しかし、その「職人技」が凄すぎたために、現場の標準化・仕組み化が遅れました。採用を増やしても、社長や幹部のスキルに追いつけない若手は「使えない」と判断され、離職。結局、難易度の高い案件はすべて社長や幹部が抱え込むことになり、社長自身の高いスキルが、組織拡大を遅らせる最大のボトルネックとなっていたのです。

社内人材:古参社員が「抵抗勢力」へ

【事例 C社:サービス業】

創業期の苦楽を共にした「気合と根性」の功労者たち。彼らは阿吽の呼吸で動いてくれますが、いざ組織を仕組み化しようとすると「昔はこうじゃなかった」「社長は変わってしまった」と、新しいシステム導入や組織変革に対する最大の抵抗勢力へと変わります。かつての団結力が、皮肉にも変化を拒む壁となってしまうのです。

3. 経営リスク:社長の「思考の渋滞」と「成功体験の毒」

組織が拡大し、情報量が増えるほど、すべての決定権を持つ社長の脳内は「思考の渋滞」を引き起こします。

「あの案件のトラブルはどうなった?」「採用の面接もしなければ」「資金繰りの相談も……」。
あらゆる情報が社長に集中し、脳がオーバーヒート状態になると、経営において最も重要な「リフレーミング(視点の転換)」ができなくなります。

さらに恐ろしいのは「成功体験の毒」です。
「これまではこのやり方で勝ってきた」という過去の成功体験は、平時においては強力な武器ですが、変革期においては判断を狂わせる「毒」となります。
「今は少し景気が悪いだけだ」「現場がもっと頑張れば戻るはずだ」
この毒に侵されると、自らの思考にフィルターがかかり、市場環境の劇的な変化や組織の限界という「不都合な真実」を見誤らせるのです。

【比較表:成長し続ける組織 vs 踊り場で止まる組織】

項目 成長し続ける組織(レジリエンスあり) 踊り場で止まる組織(成功体験の毒)
社長の視点 「過去の成功は通用しない」と自己客観視 「今までのやり方が正しい」と固執
顧客戦略 新規市場・新規顧客へ積極投資 既存顧客への依存で安心感を得る
組織構造 仕組み化・権限委譲で社長を解放 社長が全て抱え込み、現場監督化
人材育成 標準化で若手を戦力化 職人技依存で若手が育たない
変革への姿勢 アンラーニング(学習棄却)を実践 古参社員が抵抗勢力化

4. 解決策:踊り場を脱するための「戦略的レジリエンス」

この踊り場を脱するために必要なのは、根性論ではありません。組織の歪みをあえて表面化させ、それをレバレッジ(テコ)にして次のステージへ飛躍する「戦略的レジリエンス」です。

これは、過去の成功体験(成功体験の毒)を一度「アンラーニング(学習棄却)」し、現在の制約条件を「成長の種」へと再定義する力です。そのためには、社長自身が「現場の最高責任者」という役割を脱ぎ捨て、客観的な視点で自社を眺める「自己客観視」が不可欠です。

【プロセス図:第二創業期への3ステップ】

  1. 「思考の渋滞」と「成功体験の毒」の自覚
    社長が現場に埋没し、過去の成功体験に縛られている現状を認識する
  2. エグゼクティブコーチングによる「自己客観視」
    利害関係のない第三者(コーチ)との対話で、思考の渋滞を整理し、成功体験の毒を解毒
  3. 権限委譲と戦略集中で「第二創業期の爆発力」を発揮
    社長が現場から解放され、未来戦略に集中。組織が新たな成長軌道へ

5. 第二創業期の爆発力を生む「エグゼクティブコーチング」の役割

しかし、社長が一人で「成功体験の毒」を解毒し、思考の渋滞を整理するのは極めて困難です。なぜなら、社内に社長を客観的に批判し、鏡となってくれる存在はいないからです。

そこで、プロの第三者による「エグゼクティブコーチング」が機能します。
コーチは、経営者にとっての「鏡」となります。
「その意思決定は、今のステージでも正解ですか?」
「成功体験の毒に、判断を鈍らされていませんか?」
こうした鋭い問いかけが、社長の脳内の渋滞を解消し、止まっていた思考を動かし始めます。

【事例 D社:建築業】

コーチングを導入したD社の社長は、月1回の対話を通じて、自分が「現場監督」を辞めていないことが最大の問題だと気づきました。コーチと共に「権限委譲」と「新規事業への集中」を徹底した結果、社長は未来の戦略を練る時間を確保。1年後、D社は新しい工法による市場開拓に成功し、利益率が以前の1.5倍に跳ね上がりました。

社長が現場から離れ、戦略に集中できる状態を作ること。これこそが、第二創業期における最大の爆発力を生む源泉なのです。

結び:10年目は「衰退」ではなく「最高の再スタート」

売上や利益の頭打ちは、決して衰退の始まりではありません。それは、今のビジネスモデルと組織構造が「その役割を十分に果たし終えた」という成長のサインです。

10年という節目に、あえて立ち止まり、戦略的レジリエンスを持って自らを再定義する。
過去の成功を捨て、新しい成功を掴み取る準備はできていますか?
私たちは、その孤独な決断と変革のプロセスを、最強のパートナーとして支え続けます。