会議の「通信エラー」を放置するな —— 社長の指示が空転する真犯人は、地頭の悪さではなく「OSの欠如」である
「なぜ、何度言っても的外れな回答しか返ってこないのか?」
「なぜ、良かれと思って出した指示が、現場で勝手に解釈され、頓珍漢な結果になるのか?」
経営者が日々感じるこの「噛み合わなさ」は、個人の能力ややる気の問題ではありません。組織内に「情報を整理し、伝達するための共通OS(ロジカルシンキング)」がインストールされていないことが、真の原因です。なかでも、ロジカルシンキングの核となる「MECE(漏れなく、ダブりなく)」という概念が共有されていない組織では、社長の言葉は常にフィルターにかかったように歪んで伝わります。
1. 現場で起きている「物差し(基軸)」の不一致という悲劇
会議で意見が食い違うとき、大抵の場合、双方が「別の物差し」で会話をしています。例えば、中古車輸出代行の現場を例に取ってみましょう。社長が「今の在庫のリスクについて話そう」と切り出したとします。
- 社長の頭にあるMECE(物差し): 「滞留期間別(3ヶ月以上、1ヶ月以上、新着)」
- 社員の答えるMECE(物差し): 「車両の種類(ガソリン車、ハイブリッド車、商用車)」
社長は「キャッシュフローや換金スピード」を懸念して問いかけているのに、社員は「在庫の構成(ジャンル)」を報告している。これでは会話は永久に噛み合いません。社長のイライラの正体は、社員の知識不足ではなく、この「基軸(切り口)の不一致」そのものなのです。
物差しのズレが生む「通信エラー」
社長の棚(物差し)
- 滞留3ヶ月以上
- 滞留1ヶ月以上
- 新着在庫
▶ キャッシュフロー重視
社員の棚(物差し)
- ガソリン車
- ハイブリッド車
- 商用車
▶ 在庫構成重視
2. 「ロジカルな会議」を阻むMECEの崩壊
会議を「時間の浪費」に変える真犯人は、発言の多さでも時間の長さでもなく、議論の「構造の不備」です。
① 基軸のブレによる空中分解
会議の途中で、ある人は「コスト」の話をし、ある人は「品質」の話をし、またある人は「納期」の話をする。これでは議論は一向に収束しません。MECEの基軸を最初に揃えない会議は、地図を持たずにバラバラの方向に走り出す集団と同じです。
② 「漏れ」が招く二度手間とリスク
「新市場への参入」を議論している際、競合分析(外的要因)は完璧でも、自社のリソース(内的要因)が抜け落ちていれば、その結論は砂上の楼閣です。報告に「漏れ」があるたびに、社長は「あの件はどうした?」という火消し作業に追われ、本来の職務である「未来への意思決定」を妨害されます。
③ 「ダブり」が議論を不透明にする
同じ問題に対して、複数の部署が重複して議論している。この「重複」は、責任の所在を曖昧にし、誰が何をすべきかという実行力を著しく削ぎ落とします。
3. 「ロジカルな報連相」の極意:相手の脳の負担を最小化せよ
報連相(報告・連絡・相談)において、部下が最も犯す罪は「自分の脳内の未整理なゴミ」をそのまま上司に投げつけることです。MECEをインストールされた社員は、情報の「渡し方」が根本から変わります。
- 「漏れなく」報告する誠実さ:状況(Fact)、原因(Reason)、対策(Action)というMECEな棚に沿って情報を届ける。この一歩が、社長からの「問い直し」をゼロにします。
- 「ダブりなく」相談する知性:論点を整理して切り出す。これは、聞き手の脳の負荷を減らそうとする、究極のコミュニケーション・ホスピタリティです。
- 「基軸を宣言して」提案する:「今回の案には、3つのメリットと、2つのリスクがあります」というように、最初に情報の「棚」を宣言する。
※これは、あなたの会社の優秀なベテランが、無意識に、しかし孤独に行っている思考の型です。彼らの暗黙知を言語化し、組織の共通言語にすることこそが教育の役割です。
4. MECEはスキルではなく、プロフェッショナルとしての「誠実さ」である
ここで重要なのは、MECEとは一部のエリートだけが使う「分析テクニック」ではないということです。組織を動かす全員が、「漏れなく、ダブりなく考え、話し、聞く」という態度を徹底すること。それこそが、プロとしての最低限の礼儀です。「漏れ・ダブり・ズレ」を許容する文化は、組織に甘えを生み、スピードを殺します。
次のステップ:インフラ(論理)の上に「意志」を宿す
共通言語(ロジカルシンキング)を整えたら、次はそれを動かす「エネルギー源」を確認してください。AI時代、どんなに論理的であっても「感謝心(報恩の矜持)」がない社員は、結局AIの平均値に甘んじることになります。
「サボり上手」を脱し、AIを砥石に変える自律型社員の条件はこちら5. 結論:ロジカルシンキングは、組織を加速させる「インフラ」である
MECEを起点とするロジカルシンキングは、単なる「お勉強」ではありません。社長の思考を現場へ正確にデプロイし、現場の情報を経営判断の材料へと一瞬で変換するための、「組織の通信インフラ」です。
彼らに必要なのは、考えるための「道具(フレームワーク)」と、伝えるための「型」、そして「漏れなくダブりなく向き合うというプロの態度」です。この共通OSがインストールされたとき、あなたの会社の会議は「報告の聞き直し」から「未来への意思決定」の場へと劇的に進化します。
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