予算、人員、時間、そしてリスク。巨大な壁が目の前に立ち塞がるとき、誰しもが怯み、諦めたくなる。特に決断の全責任を背負うリーダーであれば、失敗した際の損失の大きさを知っているがゆえに、その足はすくみ、「今は無理だ」と判断して組織を守ろうとする。
それは極めて誠実な防衛本能だ。しかし、その怯えに身を任せている限り、あなたは一生、競合がひしめき、価格競争に明け暮れるレッドオーシャンから抜け出すことはできない。誰もいない広大なブルーオーシャンへ舵を切るために必要なのは、無謀な勇気ではない。制約を「壁」ではなく「解除の対象」と定義し、リスクを完封するVM社固有の武器、「問いの技術」である。
制約解除の鍵:ロックを開く問いの技術
制約(ロック)
予算・人員・時間・リスク
問いの技術(鍵)
解除可能な対象として再定義
1. 手法①:制約を「パズル」として解体し、解除の鍵を探す
「予算がない」「人がいない」という言葉は、思考を放棄するための免罪符に過ぎない。一流のリーダーは、制約を不変の壁ではなく、解除可能な「ロック」として捉え直す。制約とは今この瞬間の「設定値」であり、いくらでも書き換えられるものなのだ。
広告予算が枯渇した状況で新サービスの認知度を上げなければならなかったIT企業。社長は「予算がないからできない」という思考を捨て、「予算という制約を解除するために、キャッシュ以外で解決する方法は何かないか?」と、自らの脳に問いを立てた。彼は、自社が持つ「未公開の市場データ」に着目。これを欲しがっている業界最大手に対し、PR枠の提供と引き換えにデータを提供。結果、数億円規模の全国的なプロモーションを「持ち出しゼロ」で実現した。制約を「解除の対象」と見た瞬間に、別の鍵が見つかったのである。
2. 手法②:リスクを「参入障壁」という武器へと書き換える
誰もが怯えるリスクこそ、最大のチャンスが眠っている。リスクを冷静に解剖し、その対策を「他社が真似できない武器」に変えれば、それはあなたの独壇場を守る強固な城壁(参入障壁)になる。
複雑な法規制が壁となり、誰も参入していなかった未開拓市場。周囲が反対する中、社長は問いを立てた。「この規制という制約を解除するための具体的な方法はないか? むしろこれをクリアすること自体を、他社が追いつけない『最強の防衛線』に転換できないか?」彼は専門家を巻き込み、世界で最も厳格な「自主規制スタンダード」を自ら構築。行政がそのスタンダードを認めたとき、基準を満たせるのは彼の会社だけになった。リスクを正面から受け止め、それを解除する「仕組み」を構築した結果、彼は競合不在のブルーオーシャンを独占したのである。
3. 手法③:リスク対策の完遂が、跳躍するための「ライセンス」を生む
怯えを消すのは、根性ではない。「対策をやり抜いた」という客観的な事実だ。リーダーがチャンスを前にひるむのは、対策が「穴だらけ」であることを潜在意識が知っているからだ。リスクが発生しないための「予防」と、発生した際の「リカバリー(プランB)」を緻密に詰め切る。このプロセスを完遂することこそが、ブルーオーシャンへ跳躍するための論理的な「跳躍するライセンス」をリーダーに与える。
供給網の混乱で納期が保証できない状況下。ある製造業の社長は問いを立て続けた。「納期遅延のリスクに対し、リスクが発生しないようにするにはどうするか? 万が一発生した際のリカバリー策は万全か?」彼は予備ルートを3つ、さらに自社専用の臨時便まで確保。この「万全のプランB」という事実が、彼に「納期絶対保証」を叫ぶ自信を与えた。競合が尻込みする中、彼一人だけが確信を持って顧客にYESを告げ、市場の信頼を独占。まさに「ライセンス」を持った者だけが掴める勝利であった。
4. 手法④:コーチとの対話で「思考のOS」ごと制約を外す
経営者は、自らの「過去の成功体験」という最大の制約に縛られている。自分一人の問い立てでは、無意識に「いつもの枠」の中で答えを探せない。VM社のコーチングは、答えを教える場ではない。あなたの脳のロックを外すための、「異質の問い」を突き立てる場である。
「高い人件費率」が利益を圧迫していた老舗チェーン。社長はコーチングを通じて、これまでの経営哲学を揺さぶる問いを突きつけられた。「もし、あなたが明日からこの会社のライバルの社長になり、この会社を確実に潰しにかかるとしたら、今の『人件費が高い』という制約を、どうやって解除し、利益をさらうか?」この問いが脳のロックを外した。翌日、彼は「人件費を削る」のではなく、そもそも「人がいらないビジネスモデル」へと転換を決断。常識という制約を「解除」した結果、利益率は従来の3倍へと跳ね上がった。
5. 結論:制約を解除した者だけが、青い海を見る
経営者の仕事は、目の前の事象に「答える」ことではない。不可能を「解除待ちの状態」へと定義し直し、万全の対策をもって、組織がこれまで到達できなかった領域へと導くことである。
レッドオーシャンからブルーオーシャンへの跳躍
ブルーオーシャン
競合不在の独壇場
レッドオーシャン
競合がひしめく価格競争
「無理」という言葉が浮かんだら、こう自問してほしい。
「これは壁なのか? それとも、まだ私が解除の鍵を見つけていないだけのロックなのか?」
制約条件は、解除の対象にしか過ぎない。いくらでも解除できる方法はある。
リスクを解剖し、制約を解除し、誰もいないブルーオーシャンへ跳躍する。あなたがその「決断の技術」を磨き、自らの旗(理念)をどこまでも遠くへ運ぶための思考の研磨場として、エグゼクティブコーチングは存在する。